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料理という行為を解体して視覚化する/玉村豊男「食の四面体」

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なんとなく読みはじめた本が忘れられない1冊になる、ということはよくある体験だと思うのですが、最近はいい本に出会うと、読み終えた興奮を引きずりつつ

他の方が読んだレビューを検索 → その本に書かれていたことの意味を再確認 → 該当部分を再読

といった読み方をしていることが多くあります。自分1人では気付かなかった指摘、自分が持っている知識だけではわからなかった引用などを、頭がいい人たちの力を借りて理解しているという感覚でしょうか。

最近読んだ本の中で、読み終えた後に検索したら自分が全く知らなかった知識が詰まりまくっていることを知って感激した1冊を紹介したいと思います。玉村豊男「食の四面体」です。この本は、我々が普段当たり前のようにしている料理とはそもそもなんであるのかを、図面化・相対化して考えてみようという試みをしている本です。

……と書くと面白くなさそうなのですが、そんなことはありません。著者が僻地を旅して見てきた現地料理と、(この本が書かれた1980年の)日本の日常の料理風景と、レヴィ=ストロースの提示した構造主義が学べるという、とても刺激的な本なのです。

この本の目的は、料理というものが、「火」、「油」、「水」、「空気」の4代要素のブレンドによって成り立っているということを証明するためにあります。それぞれの要素を角に持つ三角錐があり、焼き物、揚げ物、煮物、干物、それらはその三角錐のどこに位置するか、料理の本質・根本とはなんであるのかを掘り下げて考えていくのです。たとえば、煮物であれば「水」と「火」の中間から「油」のフィールドに多少寄ったマッピングができる、といった具合に。

かつて理系だったので数学をたくさん勉強をしてきた身としては、料理という日常が数値に切り刻まれて、自分の行為が四面体の上にマッピングされることは快感以外の何物でもなかったです。物事の原理を図上に表すことのなんと気持ちいいことか。料理とは日常でありながら実験であり、解析して視覚化できるものであるということを理解することができました。

料理の四面体のモデルは、レヴィ=ストロースが考えた料理の三角形を元にしているのだそう。その、「料理の三角形」に出てくる「発酵」の過程は無視されてるけどいいのか? といった疑問は残るんですが、多くの方が刺激を受ける本だと思います。ネット上には面白いレビューがたくさんあるので、興味を持たれた方はまずはそちらをご覧いただければと。気になったら本もぜひ手に取ってみてください。

私がおすすめするレビューはこの辺↓です。

・わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる
料理を好きに自由にする「料理の四面体」

・語られる言葉の河へ
【玉村豊男】料理の四面体 ~理論と実例~

・Amazonのレビュー一覧
料理の四面体

(原田星)


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